冷凍ほうれん草は、使う前にゆでたほうがいいのでしょうか。
私は生のほうれん草は、アク抜きのためにゆでています。冷凍のほうは、ゆでる必要がないならレンジで温めて済ませたいと思い、調べました。
実は、冷凍ほうれん草は、ゆで直す必要はありません。
凍らせる前に下ゆでされていて、ゆで直すとビタミンCや葉酸が大きく減るからです。
ただし、加熱は必要です。
冷凍ほうれん草は、凍らせる前に下ゆでされている
市販の冷凍野菜は、凍らせる前に短い時間加熱されています。
これを「ブランチング」といい、目安は100℃の熱湯で2〜5分ほどです。
野菜の中にある酵素は、凍らせても働き続けます。
下ゆでしないまま冷凍すると、保存中に味や色が落ちてしまうため、この下ゆでが必要なんです。
出典:君塚道史「これからの冷凍野菜~『国産冷凍野菜』の拡大に向けて~」野菜情報 2024年8月号(農畜産業振興機構)
https://alic.go.jp/content/001247137.pdf
ただ、袋の裏には「凍結前加熱の有無:加熱してありません」と書かれていることがあります。
前回の記事で確かめた国産の冷凍ほうれん草も、そう書かれていました。

この欄は、食中毒菌などの衛生の基準のうち、どの区分で作られた商品かを示すものです。
下ゆでしたかどうかを示す欄ではありません。
国の消費者委員会の資料でも、「加熱してあるように見えるのに、なぜ『加熱していない』なのか」という消費者の疑問が取り上げられています。
それくらい、分かりにくい表示なんです。
出典:消費者委員会 食品表示部会 委員提出資料「『凍結前加熱の有無』という表示についての改善の提案」(2014年3月14日)
https://www.cao.go.jp/consumer/history/03/kabusoshiki/syokuhinhyouji/doc/s140314_sankou2.pdf
アク(シュウ酸)は、下ゆでで減る
生のほうれん草をゆでるのは、えぐみのもとになる「シュウ酸」を減らすためです。
私が生のほうれん草をゆでているのも、このアク抜きのためです。
国の研究機関である農研機構のグループは、ほうれん草をゆでる温度と時間を変えて、シュウ酸がどれだけ減るかを調べました。
100℃で2分ゆでると、シュウ酸は67%減りました。
ほうれん草に多い色素のルテインは、77%残っていたと報告されています。
一方、60℃のお湯に30秒くぐらせただけでは、シュウ酸の減り方は28%でした。
出典:Wang Z, Ando A, Takeuchi A, Ueda H. Effects of Cooking Conditions on the Relationships Among Oxalate, Nitrate, and Lutein in Spinach. Food Science and Technology Research. 2018;24(3):421-425.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/fstr/24/3/24_421/_html/-char/ja
市販の冷凍野菜の下ゆで(100℃で2〜5分ほど)は、この研究でシュウ酸が67%減った条件に近いものです。
下ゆでの温度や時間は商品ごとに違い、袋にも書かれていませんが、アク抜きのためにゆで直す必要は、生のほうれん草ほどはありません。


冷凍ほうれん草は、もうアク抜きが済んでいるんだね。

はい。だから、アク抜きのためにもう一度ゆでなくていいですよ。それに、ゆで直すと栄養のほうも減ってしまうんです。
冷凍ほうれん草の栄養は、ゆで直すと大きく減る
冷凍ほうれん草は下ゆでしてあるので、袋から出したままの値を生と比べると、栄養が少なく見えます。
そこで、文部科学省の食品成分表から、実際に食べるときの形(100gあたり)で比べました。
| 100gあたり | 生をゆでて炒める | 冷凍を炒める | 冷凍をゆでる |
|---|---|---|---|
| ビタミンC | 21mg | 16mg | 5mg |
| 葉酸 | 140μg | 150μg | 57μg |
| β-カロテン | 7,600μg | 7,200μg | 7,100μg |
生のほうれん草の値は、成分表の「油いため」で、アク抜きのために下ゆでしてから炒めた値です。
冷凍も工場で下ゆでしているので、どちらも「1回ゆでてから炒めた」同じ条件での比較になります。
炒めて食べるなら、冷凍でも、生をゆでて炒めた場合とほぼ同じ栄養がとれます。
しかし、冷凍ほうれん草をさらにゆでると、ビタミンCは5mg、葉酸は57μgまで減ります。
生のほうれん草をゆでた場合(ビタミンC 19mg・葉酸110μg)と比べても、半分以下です。
ビタミンCと葉酸は水に溶けやすく、ゆで汁に出ていってしまうためです。
β-カロテンは水に溶けにくいので、ゆでてもほとんど減っていません。
冷凍ほうれん草の栄養を残すには、ゆで直さないことが大切です。
出典:文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」ほうれんそう 葉 通年平均 油いため(06359)・ゆで(06268)、冷凍 油いため(06373)・冷凍 ゆで(06372)
https://fooddb.mext.go.jp/

ゆでずに使う食べ方 3選
- 凍ったまま炒め物に:フライパンに直接入れて、肉や卵と一緒に炒めます
- 凍ったまま汁物に:みそ汁やスープに入れます。汁に溶け出したビタミンも一緒にとれます
- レンジで加熱する:私が使いたいのもこの方法です
成分表にはレンジで加熱したときの値がないので、数字では比べられません。
ただ、レンジはお湯を使わないので、ゆで汁に溶け出す分はありません。
レンジは加熱むらが出やすいので、途中で一度混ぜて、全体が熱くなるまで温めましょう。
先ほどの消費者委員会の資料でも、レンジの加熱むらによる食中毒の心配が指摘されています。
冷凍ほうれん草は、凍ったまま・解かしただけで食べないでください。袋に「加熱してお召し上がりください」と書かれた商品は、加熱して食べる前提で作られています。スムージーにそのまま入れるのも避けましょう。袋の裏の見方は、前回の記事でまとめています。

まとめ
- ゆで直し:冷凍ほうれん草は凍らせる前に下ゆでされているので、ゆで直さなくてよい
- アク:100℃で2分ゆでるとシュウ酸は67%減った。市販の下ゆでも近い条件
- 栄養:炒めれば、生をゆでて炒めた場合とほぼ同じ。ゆで直すとビタミンCと葉酸は半分以下に
- 加熱:生では食べず、炒め物・汁物・レンジで加熱する
これを踏まえた私の意見
私は先日冷凍ほうれん草を買いましたが、ゆでるべきか悩んでいました。今回調べてみて、ゆでる必要はない、むしろゆでると栄養が減ってしまうことがわかり、勉強になりました。
今後は生のほうれん草は、時間や気力があるときにゆでてから調理する、時間や気力がないときは、冷凍ほうれん草を使って楽に調理してみようと思います。
冷凍ほうれん草は、ゆでずに炒め物や汁物、レンジで気軽に使ってみてくださいね。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の商品の安全性や効果を保証するものではありません。成分の値は文部科学省「日本食品標準成分表」によるもので、商品によって異なることがあります。持病のある方や食事制限を受けている方は、医師や管理栄養士にご相談ください。
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