ある夏の買い物帰り、薬局とスーパーを回ってご褒美のハーゲンダッツを買いました。
ワクワクしながら冷凍庫に入れようとしたら、少し溶けていて容器を握った指がぶにゅっと沈みました。
その後、再冷凍したハーゲンダッツをおいしく食べました。
しかし冷静に考えると、乳脂肪分を含むアイスです。あれはお腹を壊してもおかしくなかったのでは?
気になったので、調べてみました。
結論から言うと、判断の基準は「どのくらい溶けたか」ではありません。「何℃の場所に、何時間あったか」です。
このブログでは、これまで罪悪感が減るアイスの選び方や夜のアイスを取り上げてきました。
今回は、その手前にある「買って帰るまで」の話です。
目安は2時間。気温32℃を超える場所なら1時間

アメリカの公的な食品安全ガイドには、停電などで冷凍庫の中身が溶けたとき、何を残して何を捨てるかの基準がまとめられています。
基本のルールはこうです。
- 氷の結晶が残っている、または冷蔵庫並みに冷たい(4℃以下)→ 再冷凍してよい
- 4℃を超える場所に2時間以上あった → 処分する
- 気温32℃を超える場所なら、その目安は1時間
そして、この一覧表のなかでアイスクリームとフローズンヨーグルトは「処分する」に分類されています。
冷凍食品のなかでも、厳しめの扱いです。
出典:FoodSafety.gov(米国保健福祉省・農務省)Food Safety During Power Outage
アイスに賞味期限がないのは「−18℃以下」が前提だから
アイスの容器には、賞味期限が書かれていません。
これは、−18℃以下で保存されていれば品質の劣化が少ないことなどを理由に、食品表示基準で期限表示の省略が認められているためです。
裏を返すと、「ずっと凍っていたこと」を前提にした表示がない状態だということです。
溶けてしまった時点で、その前提から外れます。「賞味期限がないから大丈夫」とは考えないほうが安全です。

じゃあ、ちょっとぶにゅっとしただけでも捨てなきゃだめなの?

そこまで神経質にならなくて大丈夫ですよ。
大事なのは、暑いところに何時間あったかです。
買い物の帰り道の30分くらいなら、すぐ冷凍庫に戻して早めに食べれば大丈夫なことがほとんどです。
冷凍は「菌を殺す」ではなく「増やさない」
ここを勘違いすると、判断を間違えます。
実際に起きた食中毒事件のアイスを使って、−20℃で3か月ごとに36か月間、菌の数を調べた研究があります。リステリアという食中毒菌は、36か月後も生き残っていたと報告されています。
出典:Salazar JK, et al. (2020) Journal of Dairy Science 103(1):172-175
冷凍は、菌の活動を止めているだけです。
つまり、溶けている間に増えた菌は、もう一度凍らせても減りません。「再冷凍したから大丈夫」は通用しません。
少し溶けた程度で、急に危なくなるわけではない
とはいえ、少し柔らかくなっただけで慌てる必要はありません。
同じ食中毒事件のアイスから作ったミルクシェイクを、常温(22.5℃)に14時間置いた研究があります。
菌はすぐには増えませんでした。平均で最初の約7.6時間は目に見えて増えず、そのあとは1.7時間ごとに倍のペースで増え、14時間後には約13倍になったと報告されています。
菌が増えるには、それなりの時間がかかるということです。
出典:Chen Y, et al. (2016) Frontiers in Microbiology
補足:この研究が調べたのはミルクシェイク(液体)を常温22.5℃に置いた条件で、溶けたアイスそのものではありません。夏の車内やレジ袋の中はもっと高温になるため、同じ時間では考えられません。「菌が増えるには時間がかかる」という点を手がかりとして紹介しています。
私のように買い物の帰り道で少し柔らかくなった程度で、すぐ冷凍庫に戻したのであれば、過度に怖がらなくて大丈夫です。
買い物帰りに、今日からできること 3選

1. アイスは最後に、家の近くの店で買う
私はこれをやるようになりました。
薬局やスーパーを何軒か回る日は、アイスだけ最後の店で買います。持ち歩く時間がいちばん短くなるので、そもそも溶ける時間をつくりません。
2. 保冷バッグに保冷剤を入れる
保冷バッグだけでは足りません。
夏場は保冷剤を一緒に入れておくと、帰り道の温度が変わります。アイスを買う予定の日は、家を出るときに保冷剤を1つ入れておくだけです。
3. 帰宅したら「冷たさ」で判断する
- 形が残っていて、まだ冷たい → すぐ冷凍庫へ。早めに食べる
- ぬるい、または容器の中で液体になっている → 処分する
迷ったら、暑い場所にどのくらいあったかを思い出してください。2時間(気温32℃を超える日なら1時間)を超えていたら、やめておきましょう。

いちばん確実なのは、溶ける時間をつくらないことです。買う順番を変えるだけなら、今日からできますよ。
まとめ
- 判断の基準:溶け具合ではなく、何℃の場所に何時間あったか
- 目安:米国の公的ガイドでは4℃を超えて2時間(気温32℃超なら1時間)。アイスは冷凍食品のなかでも厳しめの扱い
- 冷凍は殺菌ではない:溶けている間に増えた菌は、再冷凍しても減らない
- 予防:買い物ではアイスを最後に。保冷バッグと保冷剤で、溶ける時間をつくらない
迷ったときは「どのくらい溶けたか」ではなく、「どのくらいの時間、暑いところにあったか」で決めてくださいね。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の効果を保証するものではありません。健康状態に不安がある方は、医療機関にご相談ください。
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